薬指について

なぜ三線では、薬指を使わないのか?

まず、このタイトルを見て「えっ三線って薬指使わないの?」とびっくりされる方もいらっしゃるかもしれません。

そうです、三線では、人差指、中指、小指を使い、薬指は原則として使わないのです。

おそらく、ギターなど他の弦楽器を経験したことがある人がはじめて三線をさわるとき、自然に中指が出てしまうかと思います。

結論から言うと、使っちゃいけないと言うわけではなく、使わないほうが合理的だから使わないというわけなんです。

あとで説明しますが、実は、薬指を使う場合もあるんです。

まず、なぜ薬指を使わないのかを自説を交えて説明します。というかほぼ自説です(笑)

理由その1 薬指は力が入りにくい

薬指は無名指や紅差し指とかよばれていて、力が入りにくく、5指のなかで最も動かしにくい指と言われています。

小指ではなく、薬指が自然にでてしまうかたは、「そうかなぁ」と感じるかたもいるかもしれませんが…。

ちなみに人差指が1の指、中指が2の指、薬指が3の指、小指が4の指となってます。

三線は、フレットレスの楽器なので、ピンポイントで勘所を「しっかりと」押さえる必要がありますので、力が入りにくく、その割りに弦を押さえる部分の面積の大きい薬指では都合が悪くなります。

また、小指を使ったほうが押しやすい(音がとりやすい)ポジションがあるので薬指と小指を使い分けるのではなく、あえて統一したほうが合理的と考えることもできます。

 

理由その2 琉球音階が弾きにくくなる

琉球音階はまた別のページで説明しますが、簡単にいうと沖縄っぽい音を構成する音階のことです。

その琉球音階のなかで、「老」→「高い尺」→「老」というパターンが良く出てくるのです。

その時に中指で「老」を押さえたまま、小指で「高い尺」を押さたほうが綺麗な音が出せるところがあります。

そこは薬指ではなく、小指を使用したほうが断然使いやすいです。

薬指を使用すると距離的にもきついですし、遠い位置の勘所だと理由その1で説明したように力が入りにくくなります。

 

三線は言うまでもなく、沖縄に根付いた楽器ですので、沖縄音楽(琉球音階)を奏でるのに適した楽器であると言えます。

薬指を使わないというのは過去の名人たちが受け継いできた琉球音階を美しく奏でるための基本原則なのでしょう。

動画も用意しました。ご覧ください。


薬指を使うときは、どんなとき?

このページの冒頭でもいいましたが、薬指を使う場合があります。
ここでも、必ず薬指を使わないといけないということではありません。

薬指のほうが合理的(音がとりやすい)だから、使うということだと考えてください。

ポップス(歌謡曲)など

今や三線は沖縄の音楽だけでなく、さまざまなジャンルの音楽を奏でるために使う方も増えてきています。

音楽のバックボーンがギターやベース、バイオリンなど他の弦楽器にある人にとって薬指が使いやすいと感じる人が少なくないと思います。

ポップス曲に限らないですが、「その音を出すには、薬指を使ったほうが正しい音がでるし、弾きやすいし、演奏の流れがスムーズになる」と言う場合には、ぜひ薬指を使ってください。

中位のポジションより下

中位のポジション以降、高い音のポジションで薬指を使用することがあります

中位とは「老、中、六」のポジションを人差指で、押さえられるように左手全体を下にずらすポジションのこと。(詳細はまた別のページで説明します。

例えば琉球音階では、中位のポジションで「六」、「七」、「八」を弾くことが多いです。

六を人指し指、七を中指、八を小指で押さえるのですが、八のポジションを薬指を使う人、流派(*)があります。

(*)古典音楽の”安冨祖流”で薬指を使用することがあるそうです。

理由は、高音部分にいくにしたがって、”1全音の間隔が狭くなっていきますので”(ギターのフレットを思い出すとわかりやすいですね。)、薬指のほうが押弦しやすいからなのでしょう。

同様に下位のポジション、”「イ五、イ上、イ乙」のところを薬指を使用することがあります

確かに、「イ五、イ上、イ乙」 のポジションのあたりは、小指を折りたたむように窮屈に押さえる感じになってしまいますので、合理的だなとは思います。

まとめ

しかしながら、あなたが沖縄の曲(古典や民謡)を沖縄っぽく演奏したい(沖縄のグルーブ感を出したい!)と言う場合、薬指ではなく、小指を使用していたほうが無難である。

なぜなら、後に教室へ通うことがある場合、薬指を使わないのが一般的であるから。
指導される先生によっては薬指を絶対使用させない場合もあるので。

もちろん、事故や先天的なもの、何らかの理由で、左手小指に欠損等がある場合は、その限りではないです。

沖縄にも左手小指がないので、薬指を使って演奏する有名な唄者のかたがいらっしゃいます。

そのかたは、昔やんちゃしすぎたのか、右手小指もありませんが…。